【結論】なかの家の酒まんじゅうは、イーストを使わず継ぎ足してきた種麹の発酵だけで膨らませます。だから数値化が難しいのです。
和田鈴香さんの「経験と勘が第一条件」という言葉。
これは頑固さの表明ではなく、生き物を相手にする仕事の説明です。
その中身を分解します。
放送は2026年9月26日(土)21時00分〜21時30分、TOKYO MX1の「日本のチカラ」。
この回の初回放送は2025年6月28日です。
- 膨張剤ではなく麹の発酵で生地をふくらませる
- 使うのは継ぎ足しで守り続けてきた種麹
- できあがりはもちもちの食感と甘さ控えめの餡
- 製造開始は早朝2時ごろ。発酵時間の都合が大きい
- この地域では農作業の合間の軽食を「こびり」と呼ぶ
- 同じ加工所では炭酸まんじゅう・しえ餅(白餅)も作る
- 後継者の梢さんは、この勘の部分のデータ化を進めている
- 継ぎ足しの種麹とは何なのか
- なぜマニュアル化が難しいのかの考察
- 酒まんじゅうと炭酸まんじゅうの違い
- 「早朝2時から」という時間の理由
番組の副題は「嫁と姑 ドタバタ日記」。
その対立の中心にあるのが、この製法です。
先に編集部の考察、そのあと製法の話を整理します。
【考察】「経験と勘」は精神論ではなく、菌を扱う仕事の必然だと予想する
ここからは編集部の考察です。
編集部は、鈴香さんの「経験と勘が第一条件」は守旧的な主張ではなく、生き物を相手にする作業の正確な描写だと予想します。
そう考える理由を7つ挙げます。
理由1。相手が微生物だからです。
イーストを計量して入れるのではなく、麹の発酵にふくらみを任せています。
菌の働きは温度や湿度で変わるため、同じ手順が同じ結果を生むとは限りません。
理由2。種麹を継ぎ足しているからです。
公的な記録には「継ぎ足しで守り続ける種麹を混ぜた酒まんじゅう」とあります(大分県事業承継・引継ぎ支援センター)。
継ぎ足しの種は買ってきて置き換えられません。状態を見て判断する場面が必ず残ります。
理由3。作業時間が季節で動くはずだからです。
発酵は気温に左右されます。
夏と冬で同じ時間だけ置けば同じ生地になる、とはいきません。時計ではなく生地を見る必要があります。
理由4。郷土料理としても家ごとに違うからです。
大分県の酒まんじゅうは農林水産省の郷土料理データベースにも収録されていますが(農林水産省)、家庭ごとに作り方の幅があります。
標準レシピが一つに定まらない食べ物です。
理由5。早朝2時という時刻が発酵由来だからです。
朝の店頭に間に合わせるには、生地を寝かせる時間から逆算するしかありません。
この2時という数字自体が、発酵という工程に縛られている証拠です。
理由6。鈴香さん自身は数値化を拒んでいないからです。
「私たちが受け継いできたものを、若い人たちに伝えてほしい」と述べ、勘の部分のデータ収集にも協力しています。
守りたいのは自分の立場ではなく味です。
理由7。梢さんも「価値はある」と認めているからです。
「お母さんしか作れないものには価値はあるけど、続かない」(民間放送教育協会)。
技術そのものは否定されていません。争点は再現性だけです。
補足すると、この構図は他の発酵食品でも繰り返されてきました。
味噌でも醤油でもパンでも、種を継ぐ職人と数値で管理したい側のあいだで同じ議論が起きています。
そして多くの場合、決着は「どちらかが勝つ」ではなく、数値化できる範囲を広げながら最後の判断だけ人に残す、という線引きに落ち着きます。番組もそこへ向かうはずです。
以上から、番組の対立は「古い人 対 新しい人」ではなく、菌という変数をどう扱うかの議論だと予想します。
ただし実際のやりとりは公表されておらず、あくまで編集部の推測です。
継ぎ足しの種麹とは
酒まんじゅうは、名前のとおり酒づくりと同じ原理を使うまんじゅうです。
米に麹菌を繁殖させた麹で甘酒のような種を起こし、その発酵で小麦粉の生地をふくらませます。
「継ぎ足し」というのは、前に作った種の一部を次に回す方法です。
パンのルヴァン種やぬか床と同じ考え方で、その加工所にしかいない菌の状態が受け継がれていきます。
だから同じ配合で作っても、別の場所では同じ味になりません。
「お母さんしか作れないもの」という梢さんの言葉には、技術だけでなく種そのものの話も含まれていると考えられます。
家庭でも麹から作ることはできます。
乾燥米麹や生麹は通販でも手に入ります。
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※乾燥米麹・生麹や、手作りキットが探せます。
酒まんじゅうと炭酸まんじゅうの違い
なかの家では両方を作っています。
名前が近いので混同されがちですが、ふくらませ方が違います。
| 項目 | 酒まんじゅう | 炭酸まんじゅう |
|---|---|---|
| ふくらませ方 | 麹の発酵 | 重曹(炭酸)の反応 |
| 仕込み時間 | 寝かせる時間が必要 | 比較的短い |
| 特徴 | もちもちした食感と麹の香り | ふんわりとした軽い生地 |
| 再現の難しさ | 種の状態と温度に左右される | 配合で管理しやすい |
マニュアル化の議論でハードルが高いのは、当然ながら酒まんじゅうのほうです。
炭酸まんじゅうは配合で決まる部分が大きく、数値で引き継ぎやすい商品といえます。
なぜ早朝2時から作るのか
道の駅などの店頭は朝から開きます。
そこにできたてを並べるには、逆算して深夜に仕込みを始めるしかありません。
発酵は急がせられない工程です。
生地を寝かせ、成形し、蒸し上げ、パック詰めする。この一連が終わるまでの時間が、始業時刻を決めています。
そしてこの時刻が、後継者問題に直結しています。
作り手は全員70歳以上。深夜から動ける人を新しく集めるのは簡単ではありません。
梢さんが二部体制を構想しているのは、この壁を崩すためです。
よくある質問(Q&A)
Q1. お酒は入っているのですか?
酒を加えて作るわけではありません。
麹による発酵を使うため「酒まんじゅう」と呼ばれます。
発酵の過程で生じる香りが、名前の由来にあたります。
Q2. レシピは公開されていますか?
なかの家固有のレシピは公開されていません。
大分県が公開している一般的な酒まんじゅうの作り方はありますが、加工所の配合とは別物です。
推測で書かれた「なかの家のレシピ」には注意してください。
Q3. 「こびり」とは何ですか?
この地域で農作業の合間に食べる軽食を指す言葉です。
酒まんじゅうはその代表格でした。
なかの家の新シリーズ「こびる」も、この言葉から取られています。
Q4. データ化すれば誰でも作れますか?
そこが番組の論点です。
梢さんは製造工程マニュアルを作れば継承できると考え、鈴香さんは経験と勘が要ると考えています。
種麹の状態という変数がある以上、完全な数値化は簡単ではないと見られます。
Q5. 賞味期限は長いですか?
賞味期限は公表されていません。
ただし保存料に頼らず蒸したてを並べる商品なので、日持ちする性格のものではないと考えられます。
購入時に店頭でご確認ください。
Q6. 作っているのは何人ですか?
正確な人数は公表されていません。
公的な記録にあるのは、加工所のメンバーが全員70歳以上という点です。
番組でも「全員が70歳以上のベテランメンバー」と紹介されています。
放送で注目したいこと
注目は種麹の扱いが映るかどうかです。
継ぎ足してきた種をどう見て、どう判断しているか。ここが「経験と勘」の実体にあたります。
もう一つはマニュアルの形。
温度や時間をどこまで数字にできたのか、逆に数字にならなかった部分は何か。
その線引きが、この回のいちばん具体的な見どころになりそうです。
まとめ
なかの家の酒まんじゅうは、膨張剤を使わず継ぎ足しの種麹による発酵だけでふくらませます。
相手が微生物なので、温度や状態を見て判断する工程がどうしても残ります。
鈴香さんの「経験と勘が第一条件」は、その事実を言い表した言葉です。
一方で梢さんは、勘の部分まで集めてレシピ化しようとしています。
放送は9月26日(土)21時00分からTOKYO MX1。
初回放送は2025年6月28日なので、番組内の年数はその時点が基準です。