【結論】次田展之さんのヘリコプターは患者を運ぶための機体ではありません。診療所を開けるための通勤手段です。
- 飛ぶ距離は番組予告でおよそ10キロ先の離島とされる
- 操縦するのは次田さん本人
- 佐木島診療所は午前、百島診療所は午後の診療
- 2026年5月11日は佐木島で診療後、岩城島へヘリで移動
- 佐木島の木曜だけJA尾道総合病院の医師が担当
- 3島とも本州・四国と橋がつながっていない
- ドクターヘリとの決定的な違い
- 診療時間から読み取れる1日の動線
- 飛べない日に外来がどうなるのか
- 島へ渡る船の航路と所要時間
- ヘリ移動が成立している条件の考察
2026年8月9日(日)よる11時15分放送のTBS系「情熱大陸」で、
瀬戸内海のフライングドクター・次田展之さんが取り上げられます。
予告を読んで最初に浮かぶ疑問が、
「医師がヘリを操縦して、いったい何をしているのか」だと思います。
この記事はそこだけを掘ります。
【考察】ヘリが止まったら外来も止まる。その穴をどう埋めているのか
ここからは編集部の考察です。
先に結論を書きます。
このヘリコプターは救急搬送機ではなく、診療所の「シャッターを上げる装置」です。
そして装置である以上、止まったときのことを考えておかなければならない。
その備えの痕跡が、公式サイトの診療日程表に残っていると見ています。
理由1:飛行が「診察開始の合図」になっている
日本経済新聞の連載「人間発見」の書き出しは、
「ヘリコプターのプロペラ音が聞こえたら診療所が開く合図だ」という一文でした(日本経済新聞)。
この一文が全部を説明しています。
島民にとってヘリの音=きょう診療所が開く、という情報なのです。
音がしなければ開かない。
救急のドクターヘリなら、飛ばない日は「何も起きなかった良い日」ですが、
ここでは飛ばない日は外来が成立しない日になります。
意味が正反対です。
理由2:診療時間が「午前と午後」で分かれている
法人の公式サイトに出ている基本の診療日程を並べると、こうなります(社会医療法人心海会)。
| 診療所 | 時間帯 | 曜日 |
|---|---|---|
| 佐木島診療所 | 10:00〜12:00 | 月・火・水・金 |
| 佐木島診療所 | 9:00〜11:00 | 木(JA尾道総合病院の医師) |
| 百島診療所 | 14:00〜16:00 | 月・火・木・金 |
気づくのは、佐木島が午前、百島が午後で、きれいに割れていることです。
そして月・火・金は両方に〇が付いています。
つまり週に3日は、午前に佐木島・午後に百島という1日2島の動線が組める設計になっています。
この時間割は、移動が数分で済むことを前提にしないと成り立ちません。
船で本土を経由して往復するなら、午前の診療を終えて午後に別の島へ入るのは相当きつい。
ヘリを持っているから、この時間割を書けたと考えるほうが自然です。
理由3:木曜だけ外部の医師が入っている
診療日程表には注記があります。
「木曜日はJA尾道総合病院ドクターによる診療となります」。
そしてその木曜だけ、佐木島の開始時刻が9時に早まります。
ここが一番おもしろいところだと思っています。
1人の医師と1機のヘリで回す体制は、裏を返せばその1人が飛べなくなった瞬間に全部が止まる構造です。
天候、整備、体調、どれか1つで崩れます。
木曜に本土の総合病院の医師が入っているのは、
単なる人手の補充ではなく、体制を1人に依存させないための設計だと考えます。
3つ目の岩城島診療所を2026年に開けたのも、この外部との接続があったからではないでしょうか。
番組予告で描かれるヘリ移動
番組公式サイトの予告では、次田さんがヘリポートへ向かい、自ら操縦桿を握って、およそ10キロ先の離島へ飛ぶ場面が紹介されています(情熱大陸公式サイト)。
10キロという距離感が重要です。
直線ならすぐですが、橋がなければ船とバスと車を乗り継ぐことになります。
3つの島はいずれも本州・四国と橋でつながっておらず、
島民が本土の病院へ通うには船に乗るしかありませんでした。
実際にヘリで島を移動した記録
診療所の公式ブログ「百島診療所日記」には、
3つ目の岩城島診療所が開業した2026年5月11日の記録が残っています。
そこには、次田さんが佐木島で診療した後、岩城島へヘリで移動したという記述があります(百島診療所日記)。
開業初日の患者数は18人。
マイナンバーカードの読み取り機にエラーが出て事務が慌ただしかったことまで書かれています。
広島県三原市の佐木島から、愛媛県上島町の岩城島へ。
県境をまたぐ移動を、午前と午後の間にこなしているわけです。
ヘリが通勤手段だという表現は、決して比喩ではありません。
船で行くとどうなるのか
比較のために、公式サイトに載っている船でのアクセスを見てみます。
| 診療所 | 船でのアクセス |
|---|---|
| 百島診療所 | 備後商船フェリー「百風」/高速船「ニューびんご」、福田港から徒歩20分・車5分 |
| 佐木島診療所 | 土生商船(三原発)佐木港から車15分/弓場汽船フェリー(須波発)向田港から車5分/瀬戸内クルージング「シトラス」(尾道駅前発)須ノ上港から車10分 |
佐木島には3つの航路があり、港も3か所に分かれています。
島の中でさらに車で5〜15分。
船の時刻に生活を合わせる必要があるのが、橋のない島の現実です。
ちなみに佐木島診療所の住所は旧向田小学校の校庭内で、駐車場が10台分あります。
閉校した学校の敷地が診療所になっている、という点も島の状況を物語っています。
誤解しやすい点
患者をヘリで運んでいるわけではない
公開されている情報の範囲では、
次田さんのヘリは医師本人が診療所へ行くための移動手段として描かれています。
患者を乗せて本土の病院へ搬送する、いわゆるドクターヘリの運用とは別のものです。
毎日3島を回っているわけでもない
公式の診療日程では、百島は水・土・日祝が休診、佐木島は土・日祝が休診です。
毎日すべての島に飛んでいるわけではありません。
なお岩城島診療所の日程は、記事作成時点で法人サイトの日程ページに掲載されていませんでした。
よくある質問
Q1. 次田さんはヘリを何のために飛ばしているのですか?
自分が診療所へ行くためです。橋のない3つの島に診療所があるため、船を乗り継ぐ代わりに空路で移動しています。番組予告では約10キロ先の島へ飛ぶ様子が紹介されています。
Q2. ドクターヘリとは何が違うのですか?
ドクターヘリは救急現場へ医師を運び、患者を病院へ搬送する仕組みです。次田さんの場合は定期の外来診療を開くための移動で、目的も運用も異なります。操縦するのが医師本人という点も大きな違いです。
Q3. 天候が悪い日はどうなるのですか?
公表されている情報では確認できていません。ただし公式サイトには「基本の診療日程」とは別に診療カレンダーが用意されており、日ごとに開院状況が変わる前提の運用になっています。
Q4. 1日にいくつの島を回るのですか?
診療時間の並びからは1日2島が可能です。佐木島が午前10時〜12時、百島が午後2時〜4時で、月・火・金は両方に診療日が設定されています。2026年5月11日には佐木島から岩城島へ移動した記録もあります。
Q5. 次田さん以外の医師も診ているのですか?
はい。佐木島診療所の木曜日はJA尾道総合病院の医師が担当すると公式サイトに明記されています。この日だけ診療時間が9時〜11時に変わります。
Q6. 佐木島診療所はどこにあるのですか?
広島県三原市鷺浦町向田野浦1712で、旧向田小学校の校庭の中にあります。駐車場は10台分です。三原発・須波発・尾道駅前発の3航路からアクセスできます。
今後の見通し
2026年5月に岩城島診療所が加わったことで、次田さんの守備範囲は広島県2市+愛媛県1町へ広がりました。
県境をまたぐ移動が日常になったわけです。
放送後は、「ヘリの費用は誰がどう負担しているのか」という点に関心が集まると予想します。
維持費のかかる機体を、島の小さな診療所3つでどう支えるのか。
ここが持続性の核心だからです。
日本経済新聞の連載でも、離島医療で持続可能な形をつくることがテーマとして触れられていました。
番組でその答えの一部が語られる可能性はあると思います。
ただしこれは編集部の予想で、外れるかもしれません。
まとめ
次田展之さんのヘリコプターは、患者を運ぶ機体ではなく、診療所を開けるための移動手段です。
島民にとってはプロペラ音が診療開始の合図になっています。
公式サイトの診療時間は佐木島が午前、百島が午後。
月・火・金は両方に診療日があり、1日2島の動線が組める形になっています。
これは短時間で島を移動できることを前提にした時間割です。
この記事では、木曜のJA尾道総合病院の医師が「1人体制の穴を埋める設計」だと考察しました。
実際のところは2026年8月9日の放送で確かめられそうです。