【結論】花王の農業技術は、洗剤と同じ「界面」の技術です。農薬を葉になじませる補助剤を約半世紀手がけてきました。
2026年10月1日(木)23時06分からのテレビ東京「カンブリア宮殿」は花王の特集です。
番組紹介には「メイク落としから洗濯洗剤、さらには農業分野まで」という一文があります。
「花王が農業?」と意外に思った方も多いはず。
花王が公開している研究開発の情報から、その中身を整理します。
- 「界面」=性質の違う2つの物質が接する境目
- 花王は約半世紀、農業資材を手がけている
- 代表は農薬を葉になじませるアジュバント(機能性展着剤)
- 2019年7月に新しいアジュバント「ドライバー」を発売
- ドローン散布用の飛散を抑える技術も開発中
- 水はけの悪い土を変える土壌改良の研究も
- 界面制御技術とは何か
- アジュバント(展着剤)の仕組み
- ドローン散布と土壌改良への応用
- 花王が農業を前面に出す理由の考察
先に編集部の考察を置き、そのあとで技術の中身を順に説明します。
【考察】農業は新規事業ではなく、半世紀続いた裏方の「格上げ」だと予想する
ここからは編集部の考察です。
編集部は、番組で語られる農業分野は、ゼロからの新規参入ではなく、長く裏方だった農業資材を成長の柱の一つとして表に出す動きだと予想します。
そう考える理由を7つ挙げます。
理由1。すでに約半世紀の実績があるからです。
花王の技術紹介サイトは、アジュバントを筆頭に約半世紀にわたり日本の農業を縁の下で支えてきたと書いています(花王の顔)。
新しく始める事業ではありません。
理由2。化粧品や洗剤と根っこが同じだからです。
同じ記事で研究者は、肌と乳液をなじませる、髪と皮脂汚れを洗う、葉に農薬を留める、どれも界面活性剤でコントロールする点は共通だと説明しています。
技術を新しく買う必要がない分野です。
理由3。洗浄の技術をさらに一段深めた製品が出ているからです。
花王は液体の表面張力だけでなく、液体と葉の間の界面張力も同時に下げる技術を開発し、機能性アジュバントとして実用化しています(花王 研究開発)。
理由4。ドローン散布という伸びる市場とつながっているからです。
同じページでは、蒸発を抑える技術と飛散(ドリフト)を抑える技術を組み合わせたドローン用アジュバントの開発も紹介されています。
人手不足の農業で需要が増える方向です。
理由5。研究所の仕組みが分野横断向きだからです。
花王には部署を壁で区切らない「大部屋制」という施策があると紹介されています。
髪の研究と農業の研究が隣り合っても不思議ではない環境です。
理由6。広げる先がすでに示されているからです。
研究開発ページは今後の取り組みとして土壌改良剤や海洋養殖飼料を挙げ、食糧安全保障への貢献を掲げています。
農業は「点」ではなく「面」で広げる計画です。
理由7。社長自身が同じ研究所の出身だからです。
長谷部佳宏社長は2003年に化学品研究所の室長を務めています(花王公式 役員略歴)。
農業資材の研究者が植物生育促進剤を開発していたのも、同じ化学品研究所だったと紹介されています。
補足すると、日用品は国内の人口が減れば市場も縮みます。一方で食糧の増産や減農薬は、世界規模で需要が続くテーマです。同じ技術で別の市場に出られるなら、使わない手はありません。番組が「界面技術の再構築」という言葉を使うのは、この組み替えを指していると考えられます。
以上から、農業は花王にとって眠っていた強みの格上げだと予想します。
番組の具体的な内容は公表されておらず、あくまで編集部の推測です。
界面制御技術とは
「界面」とは、性質の違う2つの物質が接する境目のことです。
水と油の境目がいちばん分かりやすい例です。
相いれない2つをつなぐのが界面活性剤。
洗剤のイメージが強いですが、「洗う」だけでなく「なじませる」のも得意な物質です。
| 組み合わせ | 界面活性剤の役割 |
|---|---|
| 肌と乳液 | なじませる |
| 髪と皮脂汚れ | 洗い落とす |
| 葉と農薬 | 葉の上に広げて留める |
家庭菜園でも、農薬や液体肥料に混ぜる展着剤が市販されています。
葉に薬液がはじかれて困っている方は、一度調べてみると使い方のイメージがつかめます。
▼ 展着剤はこちらから
※家庭菜園向けの少量タイプも探せます。使用時は製品ラベルの用法を必ず確認してください。
アジュバント(機能性展着剤)の仕組み
キャベツやネギのように水をはじく葉では、水で薄めた農薬が玉になって落ちてしまいます。
葉の表面がワックスのような成分や産毛のような突起で覆われているためです。
農薬は法律で量や回数が決められているため、効きが悪いからといって増やせません。
そこで少ない量で葉全体を覆うための補助剤がアジュバントです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 従来の界面活性剤 | 液体と空気の間の「表面張力」を下げる |
| 花王の新技術 | 表面張力に加え、液体と葉の間の「界面張力」も同時に下げる |
| 効果 | 葉と葉の重なりなど狭い部分にも自然にぬれ広がる |
| 製品 | 「ドライバー」(2019年7月発売・植物由来の界面活性剤を使用) |
ドローン散布と土壌改良への応用
ドローンで農薬をまくと、細かい液滴が風で飛ばされたり蒸発したりしやすくなります。
花王は、ぬれ広がる技術に蒸発抑制と飛散抑制の技術を組み合わせたドローン用アジュバントを開発しています。
公開されている比較動画では、高さ2m・横風3mの条件で、水だけの液体は風に流され、花王の展着剤を加えた液体は飛ばされにくい様子が示されています。
もう一つが土壌の「団粒化」です。
水田の粘土質の土は水はけが悪く、大豆などに転作すると育ちにくいという課題があります。
花王は2011年ごろから、植物の繊維質であるリグニンに着目した土壌改良の研究を進めてきたと紹介しています。
よくある質問(Q&A)
Q1. 花王は農薬を作っているの?
花王が手がけているのは、農薬の効きを助ける補助剤(アジュバント)や土壌改良などの農業資材です。
Q2. 界面制御技術を一言でいうと?
性質の違うもの同士の境目をコントロールする技術です。
洗う、なじませる、広げる、をすべて同じ原理で扱います。
Q3. いつから農業をやっている?
花王の技術紹介サイトでは約半世紀と説明されています。
Q4. 農業以外にも使われている?
今後の対象として、海洋養殖の飼料も研究開発ページに挙げられています。
Q5. 番組はいつ?
テレビ東京で10月1日(木)23時06分〜23時55分です。
まとめ
花王の農業技術は、洗剤や化粧品と同じ界面制御技術から生まれています。
代表は農薬を葉になじませるアジュバントで、ドローン散布や土壌改良にも広がっています。
長谷部佳宏社長がこの技術をどう語るのかは、10月1日(木)23時06分からのカンブリア宮殿で確かめられます。