【結論】民間の退職代行が丸ごとオワコンになったという事実は確認できません。通用しにくくなったのは「交渉までしてもらえる」と期待して民間業者を選ぶ使い方のほうです。
@shougun0315 なぜ民間退職代行サービスがオワコンって言われてるのか考察してみました
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- 「オワコン」と言われ出したきっかけと、その事件で何が違法とされたのか
- 利用が減っているという話に裏づけがあるのか(最新調査の実数)
- 民間業者・労働組合・弁護士でできることがどう違うのか
- 企業の3割が「取り合わない」と答えた理由
- 8月28日に予定されている判決で何が決まるのか
【考察】民間の退職代行は本当にオワコンになるのか?
ここからは編集部の予想です。
結論を先に置きます。
民間業者型の退職代行は消えません。ただし「退職の意思を伝えるだけの取次専業」に絞り込まれ、交渉が必要な人は労働組合型と弁護士型へ流れる二極化が進みます。
理由の1つ目は、需要そのものが縮んでいないことです。
東京商工リサーチが2026年3月31日から4月7日に6,425社へ聞いた調査では、2024年1月以降に退職代行を使われた企業は8.7%で、2025年6月の前回調査より1.5ポイント増えています(東京商工リサーチ)。
大企業に限れば21.3%で、5社に1社が経験しています。
ただし、これは2024年1月以降に経験があるかを聞いた数字で、逮捕後の利用動向そのものではありません。
それでも、利用者が減ったことを示す統計は見当たらず、企業側の経験率はむしろ上がっています。
2つ目は、違法とされた部分が「取次」ではなかったことです。
起訴された内容は、利用者を提携弁護士に紹介して1人あたり1万6500円の紹介料を受け取っていた点でした(時事ドットコム)。
つまり問題になったのはお金を取って弁護士へ橋渡しした行為で、退職の意思を会社へ伝える行為そのものではありません。
取次だけに徹する業者にとっては、事業を畳む理由になりません。
3つ目は、当のサービスが営業を再開していることです。
運営会社は2026年4月23日に新規受付の再開を発表し、代表取締役も4月1日付で交代しました(ITmedia NEWS)。
市場から退場したわけではなく、体制を入れ替えて残ったという形です。
これは1社の動きにすぎませんが、もっとも大きく報じられたサービスが残った以上、後続が一斉に畳む流れにはなりにくいと読みます。
4つ目は、実際のやり取りの中身が、すでに取次中心だったことです。
同じ調査で、退職代行から連絡を受けた411社が受け取った通知は、退職意思の取次のみが66.6%と最多でした。
有給休暇の取り扱いは18.7%、退職日の交渉は17.2%、未払い賃金や残業代は9.9%にとどまります。
交渉に触れる可能性のある通知を受けた企業は30.4%(125社)にとどまります。
通知した事業者の内訳までは分かりませんが、やり取りの主流は取次側にあると読めます。
5つ目は、8月28日の判決が線引きを可視化することです。
前社長には懲役2年、妻には懲役1年6月、法人には罰金200万円が求刑されています(弁護士ドットコムニュース)。
判決が出れば、紹介料を伴うあっせんに司法がどう向き合うのかが具体例として残ります。
退職代行そのものの適法性を一律に決める判断ではありませんが、業者が線を引き直す材料にはなります。
線が見えた業者は、その内側へ商品を作り替えます。
私はこの日を、業界が縮む日ではなく役割が固定される日だと読んでいます。
ここまではあくまで予想であり、断定ではありません。
「オワコン」と言われ出したきっかけは2026年2月の逮捕
話の出発点は、2026年2月3日の逮捕です。
退職代行サービス「モームリ」を運営する株式会社アルバトロス(横浜市)の社長らが、弁護士法違反の疑いで警視庁に逮捕されました(時事ドットコム)。
容疑は、弁護士資格がないまま報酬目的で利用者を提携弁護士へあっせんしたというものです。
紹介料の名目はウェブ広告業務委託費や労働組合賛助金で、警視庁は実態がないとみています。
その後の流れは、下の表のとおりです。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2026年2月3日 | 運営会社の社長ら2人を弁護士法違反容疑で逮捕 |
| 2026年2月24日 | 東京地検が本人ら・法人・弁護士2人・弁護士法人2社を起訴(対象は計174人の紹介) |
| 2026年4月23日 | 運営会社が新規受付の再開を発表。代表取締役は4月1日付で交代 |
| 2026年5月26日 | 初公判。前社長らが起訴内容を認める |
| 2026年6月5日 | 弁護士法人「オーシャン」代表に懲役1年6月・執行猶予3年の判決。同日、前社長側には懲役2年を求刑 |
| 2026年8月28日 | 前社長側の判決言い渡し予定 |
弁護士側の判決では、東京地裁が「弁護士としての使命をはき違えた」と述べています(日本経済新聞)。
紹介を受けた人数は85人、紹介料は虚偽の名目で処理されていたと認定されました。
ここで裁かれたのは弁護士の側です。
退職代行という商売そのものが違法と判断されたわけではない点は、押さえておきたいところです。
民間業者にできるのは「伝えるところまで」
動画で語られていた「民間業者は交渉ができない」という説明は、法律の建て付けとして正しいです。
弁護士法72条は、弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事務を扱うことを禁じています。
退職日をずらしてほしい、有給を残さず使いたい、未払いの残業代を払ってほしい——会社と条件を詰める場面は、法律事務にあたり得ます。
あてはまるかは個別の事情によりますが、資格のない業者が踏み込めば非弁行為と評価される可能性があります。
一方で、労働組合が運営するタイプは交渉できます。
本人が組合員になったうえで団体交渉する仕組みで、労働組合法が団体交渉権を認めているためです(ベンナビ労働問題)。
ただし組合の実体や対応範囲はサービスごとに違うため、依頼前の確認は必要です。
3タイプの違いを表にまとめます。
| タイプ | できること | 料金の目安 |
|---|---|---|
| 民間業者型 | 退職の意思を伝える・事務連絡の取次のみ | 1万〜2万4000円 |
| 労働組合型 | 取次に加えて、有給消化や退職日などの交渉 | 2万〜3万円 |
| 弁護士型 | 交渉に加えて、未払い賃金の請求や訴訟まで | 5万〜10万円 |
料金はあくまで目安で、サービスによって幅があります。
ただ、差額に表れているのは対応できる範囲の広さだと考えると分かりやすくなります。
安さだけで民間業者を選び、いざ有給の話をしたくなって詰まる。
この事故が起きやすい構図が、いまの「オワコン」という言葉の中身です。
企業の30.4%が「取り合わない」と回答
動画の3つ目の理由「企業も強気になった」には、実データの裏づけがあります。
先ほどの調査で、非弁行為が含まれる可能性があるため取り合わないと答えた企業は30.4%(1,248社)でした。
規模別では大企業21.9%、中小企業31.0%で、中小のほうが強い姿勢です。
時系列で比べた設問ではないため「増えた」とまでは言えませんが、そう答える企業が3社に1社あるのは押さえておきたい数字です。
もうひとつ、利用する側にとって重い数字があります。
採用選考で退職代行の利用歴が分かった場合、採用しないが26.0%、慎重になるが49.3%でした。
合わせると4社に3社が態度を変えると答えました。
影響しないと答えたのは23.7%にとどまります。
実際に利用歴が伝わる頻度までは分かりませんが、知られた場合の企業側の反応としては重い結果です。
誤解されやすいポイントを3つ整理します
1. 「利用者が減っている」という裏づけは見当たらない
減少を示す統計は確認できませんでした。
むしろ企業側の経験率は8.7%へ1.5ポイント増です。
逮捕後の変化を聞いた設問でも、特に変化なしが37.7%(198社)で、比較できないを除けば最多でした。
報道の勢いと実際の利用動向は、別々に見る必要があります。
2. 「退職代行そのものが違法になった」わけではない
報道された起訴内容の中心は紹介料を伴うあっせんでした。
弁護士法は、報酬を得て事件をあっせんする行為や、弁護士がその紹介を受けて報酬を渡す行為を禁じています。
これは弁護士の独立性を守るための規制で、退職の意思を伝えること自体を禁じたものではありません。
運営会社も、サービス自体への司法判断が示されたものではないとの認識を示しています。
3. 「弁護士が入っているから安心」とも限らない
今回は弁護士側にも有罪判決が出ています。
提携先に弁護士の名前があるかどうかではなく、誰が窓口として会社と話すのかを見るほうが確実です。
労働組合型なら組合名、弁護士型なら受任する事務所名が明示されているかを確認したいところです。
よくある質問(Q&A)
Q1. 民間の退職代行を使うと、退職できないことがありますか?
退職の意思を伝えるだけなら、資格がなくても行えます。
ただし調査では、30.4%の企業が非弁行為の可能性を理由に取り合わないと回答しました。
連絡が止まると手続きが進みにくくなるため、会社ともめている自覚がある人ほど労働組合型か弁護士型が向きます。
Q2. モームリはいま使えますか?
運営会社は2026年4月23日に新規受付の再開を発表しています。
代表取締役は交代し、法令順守体制の見直しを進めるとしています。
ただしこれは4月時点の発表なので、最新の受付状況は公式の案内で確かめてください。
前社長側の裁判は続いており、判決は8月28日に予定されています。
Q3. 有給を全部使ってから辞めたい場合はどうすればよいですか?
有給の消化は交渉にあたるため、民間業者では扱えません。
労働組合型なら団体交渉として、弁護士型なら法律事務として対応できます。
料金の差は1万円台から数万円ですが、目的を達成できるかどうかが変わります。
Q4. 退職代行を使った履歴は、転職先に伝わりますか?
この調査が示すのは、選考中に利用歴が分かった場合の企業の回答です。
内訳は26.0%が採用しない、49.3%が慎重になる、影響しないが23.7%でした。
実際に利用歴が転職先へ伝わる経路や頻度までは、この調査からは分かりません。
Q5. 8月28日の判決で、業界のルールは変わりますか?
法律そのものが変わるわけではありません。
ただ、どの行為がどの程度の刑罰につながるのかが具体例として残ります。
すでに弁護士側には懲役1年6月・執行猶予3年が言い渡されており、業者側の判断が加われば線引きははっきりします。
Q6. この記事の考察は、確定した見通しですか?
いいえ。
【考察】の見出しに入れた内容は編集部の予想で、公式に発表されたものではありません。
事実として扱っているのは、報道と調査データで確認できた部分だけです。
まとめ:終わったのはサービスではなく「期待の持ち方」
整理すると、次のとおりです。
- 逮捕・起訴の対象は紹介料を取ったあっせんで、取次そのものではない
- 利用が減った統計は確認できず、企業側の経験率は8.7%へ増加
- ただし30.4%の企業が取り合わないと回答し、選び方の失敗は起きやすい
- 交渉が要るなら労働組合型か弁護士型、伝えるだけなら民間業者型で足りる
- 前社長側の判決は8月28日。ここで線引きが具体化する
オワコンという言葉は強すぎます。
通用しにくくなっているのは、安い民間業者に交渉まで期待する使い方のほうです。
自分の退職に交渉が要るのかどうか。
そこを先に決めておけば、選ぶ先は自然に絞れます。
判決の出る8月28日は、その判断材料がもう一段そろう日になりそうです。