【結論】『近畿地方のある場所について』は無料のWeb小説から始まった100万部のホラーです。
作者は背筋(せすじ)さん。
2023年1月下旬に投稿サイトカクヨムで連載が始まり、
累計2200万PVを突破。
同じ年の8月30日にKADOKAWAから書籍化されました。
ホラー小説は数万部売れればヒットと言われる世界です。
そこにデビュー作でいきなり100万部超が飛び込んできました。
いったい何が書かれている本なのか。
どういう経緯でここまで来たのか。
順を追って整理します。
- 作者は背筋(せすじ)さん、これがデビュー作
- 連載開始は2023年1月下旬/カクヨム
- 形式はモキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)
- Webでの累計2200万PV
- 書籍化は2023年8月30日/KADOKAWA
- 「このホラーがすごい!」2024年 国内編1位
- 単行本と文庫版では内容が異なる
- 『近畿地方のある場所について』がどういう小説か
- ここまで売れた理由の考察
- Web版・単行本・文庫版の違い
- 受賞歴と部数の推移
2026年8月30日(日)23時10分から、
TBS「情熱大陸」が背筋さんに密着した回を放送します。
サブタイトルの「著書100万部超」が指しているのが、この作品です。
【考察】なぜ『近畿地方のある場所について』は100万部まで届いたのか
ここからは編集部の考察です。
ホラー小説の市場で、数万部はヒット、10万部なら大ヒットと言われます。
その100倍近い数字が、無名の新人のデビュー作で出ました。
結論から言えば、
「読んだ人が誰かに話したくなる作りになっているから」だと考えています。
理由1:形式そのものが話題になるから。
この作品はモキュメンタリー、つまり実在の記録を集めたように見せる形式で書かれています。
雑誌記事、投稿、証言。断片が並び、読者は自分で線をつなぐことになります。
「読み方」自体が珍しいので、感想があらすじの説明ではなく体験の説明になります。
理由2:入口が無料だったから。
連載の場はカクヨムで、誰でもタダで読めました。
累計2200万PVという数字は、書籍化前にすでに巨大な読者がいたことを示します。
本が出た時点で、買う理由を持った人が大量に待っていた状態でした。
理由3:出発点が「友達を楽しませる」だったから。
もともとは友人向けに書いた短編で、好評だったので続きを書き足していったものです。
賞に出すために整えた作品ではありません。
読んだ人が面白がるかどうかだけを見て伸びていったという育ち方をしています。
理由4:ネタバレしにくい構造だから。
あらすじを一行で言えてしまう小説は、SNSで語られるほど中身が消費されます。
この作品は断片の集合なので、要約しようとすると面白さが落ちるという性質があります。
結果として「読んでほしい」としか言えなくなる。
口コミが減らずに残る形です。
理由5:書店の賞を先に取ったから。
2023年、宮脇書店が選ぶ「ミヤボン2024」の大賞を受賞しています。
文学賞ではなく書店が推す賞です。
店頭で平積みになる導線が、早い段階でできていました。
理由6:ジャンルの年間1位を取ったから。
宝島社の「このホラーがすごい!」2024年版で国内編1位。
ホラーを読み慣れた層に対する「これは読んでおくもの」という指標になりました。
入門者と愛好家の両方に届いたことが分かります。
理由7:映画化で読者層がもう一段広がったから。
2025年8月8日に映画版が公開され、興行収入15.6億円を記録しました。
本を読まない層が作品名を知り、そこから原作へ戻る流れができます。
単行本の部数が70万部突破と報じられた時期のあと、シリーズ累計100万部以上へ伸びています。
理由8:版を変えて「もう一度買う理由」を作ったから。
2025年7月25日に角川文庫から文庫版が出ましたが、単行本と文庫版では内容が異なります。
安くなった版が出ただけではなく、すでに読んだ人にも買う理由がある設計です。
これは部数の積み上げに効いたはずです。
以上はあくまで編集部の考察・推測です。
版元や作者が「この理由で売れた」と説明したものではありません。
作品の基本情報
| タイトル | 近畿地方のある場所について |
| 著者 | 背筋(せすじ) |
| Web連載開始 | 2023年1月下旬/カクヨム |
| Web累計PV | 2200万PV突破 |
| 単行本 | 2023年8月30日/KADOKAWA |
| 文庫版 | 2025年7月25日/角川文庫(内容が異なる) |
| 形式 | モキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー) |
| 位置づけ | 背筋さんのデビュー作 |
| 英訳版 | About a Place in the Kinki Region(Yen Press・2026年1月) |
ポイントは単行本の刊行日が2023年8月30日だということです。
「情熱大陸」の放送日が2026年8月30日。
本が出てからちょうど3年の日にあたります。
偶然かどうかは公表されていませんが、覚えやすい重なりです。
▼ 単行本・文庫版・漫画版・英訳版まで出ています。まとめて見るならこちら
※単行本と文庫版は内容が異なります。版を確かめてからお選びください。
「モキュメンタリー」とはどういう書き方か
この作品を説明するときに必ず出てくるのがモキュメンタリーという言葉です。
日本語にするとフェイクドキュメンタリー。
作り話を、実際の記録の形で提示する手法を指します。
映像なら、拾われたビデオテープや取材映像の体裁を取ります。
小説なら、雑誌記事、聞き取りメモ、投稿、手記といった資料の集まりとして並べられます。
語り手が「こういう物語です」と説明してくれません。
読者は、バラバラの資料を自分で並べ替えることになります。
つながった瞬間に怖くなる、という順番です。
だから読み終わったあとに怖さが増えるタイプの作品になります。
背筋さん自身、この系統の作品を好きだと公言しています。
邦画では白石晃士監督の『ノロイ』、洋画では『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』『REC/レック』、小説では小野不由美さんの『残穢』。
好みと作り方が、そのまま一致しています。
Web版・単行本・文庫版はどう違うのか
| 版 | 時期・媒体 | ポイント |
|---|---|---|
| Web版 | 2023年1月下旬〜/カクヨム | 無料連載。累計2200万PV |
| 単行本 | 2023年8月30日/KADOKAWA | 書籍化。ここからデビュー扱い |
| 文庫版 | 2025年7月25日/角川文庫 | 単行本とは内容が異なる |
| 漫画版 | 2024年〜/月刊コミック電撃大王 | 作画は碓井ツカサさん |
| 英訳版 | 2026年1月/Yen Press | 訳者マイケル・ブラスコフスキー |
いちばん注意したいのが単行本と文庫版の違いです。
文庫は「安い版が出ただけ」と思われがちですが、この作品は中身が違うと明示されています。
プレゼントや貸し借りをするときは、どちらの版かを確認しておくと安心です。
受賞歴と評価
| 年 | 賞・ランキング | 結果 |
|---|---|---|
| 2023年 | 第9回 ミヤボン2024(宮脇書店) | 大賞 |
| 2024年 | このホラーがすごい!(宝島社)国内編 | 1位 |
| 2025年 | このホラーがすごい! 国内編(『口に関するアンケート』) | 4位 |
デビュー作でジャンル年間1位を取り、翌年も別作品で4位に入っています。
一作だけの現象ではなかったことが、数字で分かる並びです。
部数はどう伸びたのか
報じられている数字を時系列で並べると、こうなります。
- Web連載時点で累計2200万PV
- 映画化が動いていた時期に単行本70万部突破
- 2026年8月時点でシリーズ累計100万部以上
- 番組公式はデビュー作が「100万部超」と紹介
ひとつ補足しておきます。
100万部という数字は媒体によって指しているものが違います。
番組公式は「デビュー作の『近畿地方のある場所について』が100万部超」と書き、
ニュース媒体は「シリーズ累計100万部以上」と書いています。
本記事では、どちらの表現も出典ごとにそのまま記載しました。
よくある質問
「ある場所」は実在するの?
フィクションです。
実在の記録を集めたように見せるモキュメンタリーの手法で書かれた小説であり、
特定の実在地を指すものとして公表されているわけではありません。
作中の地名や場所を現実の場所と結びつける情報は、本記事では扱いません。
いまでもWebで読めますか?
背筋さんのカクヨムのアカウントは現在も公開されています。
ただし公開されている作品や範囲は時期によって変わるため、
読める内容についてはカクヨムの該当ページでご確認ください。
単行本と文庫版はどちらを買えばいい?
内容が異なるので、目的によります。
初めて読むならどちらでも成立しますが、
すでに単行本を読んだ方は文庫版で別の読み心地を味わえるという位置づけです。
漫画版はありますか?
あります。碓井ツカサさんの作画で、月刊コミック電撃大王(KADOKAWA)にて2024年から連載されています。
海外でも読まれているの?
英訳版が2026年1月にYen Pressから刊行されています。
タイトルはAbout a Place in the Kinki Region、訳はマイケル・ブラスコフスキーさんです。
背筋さんは韓国でサイン会も開いており、その場面が情熱大陸で放送されます。
続編はありますか?
同じ作品の直接の続編としてではなく、2作目『穢れた聖地巡礼について』(2024年9月3日/KADOKAWA)が刊行されています。
こちらも映画化の企画が進行中と発表されています。
まとめ
- 『近畿地方のある場所について』は背筋さんのデビュー作
- 2023年1月下旬にカクヨムで連載開始、累計2200万PV
- 2023年8月30日にKADOKAWAから書籍化
- ミヤボン2024大賞、このホラーがすごい!2024 国内編1位
- 単行本と文庫版は内容が異なる
- 放送は8月30日(日)23:10/TBS「情熱大陸」
参照リンク
- KAI-YOU 2026年8月24日(2200万PV・シリーズ累計100万部以上・単行本70万部突破・興行収入15.6億円)
- MBS「情熱大陸」公式番組ページ 2026年8月30日放送分
- ほんのひきだし 2023年12月15日(ミヤボン大賞の発表)
- PR TIMES 2025年6月13日(このホラーがすごい!2025年版の順位)
- 映画ナタリー 2025年4月4日(映画版の公開日・脚本協力)
- 番組表.Gガイド「情熱大陸」2026年8月30日(TBS 23:10〜23:40)