【結論】この法律の特例で送信防止措置を申し出る人として条文が挙げているのは撮影対象者本人と、本人が亡くなっている場合の配偶者・直系の親族・兄弟姉妹です。
- 条文が挙げる申出人は撮影対象者本人(死亡時は配偶者・直系親族・兄弟姉妹)
- 条文が定めるのは事業者が賠償責任を負わない条件
- 号の要件は3つ。申出・照会・二日の経過(+柱書の「必要な限度」)
- 第3条の罪は告訴がなければ起訴できない(親告罪)
- 国と自治体は申出先や方法の周知を含む必要な措置を講ずるものとされている
- 削除を申し出られる人の範囲
- 条文が定める3つの条件
- 「二日」がどこから数えられるのか
- 刑事の条文が親告罪であること
私的な性的画像がネットに出てしまったとき、誰が・どこへ・何を示して削除を求められるのか。
この点は法律に具体的に書かれています。
e-Gov法令検索の現行条文を読み、手順の形で整理します。
【考察】この条文は「消すため」ではなく「消した側を守るため」に書かれていると読みます
ここからは編集部の予想です。
結論を先に置きます。
この条文は、削除を義務づけるものではありません。
削除に踏み切った事業者が、後から責められないようにする条文だと読みます。
理由1:条文の主語も効果も事業者側です。
第4条の柱書は、必要な限度で送信防止措置を講じ、さらに第1号から第3号までを満たす場合に「賠償の責めに任じない」と定めています(e-Gov法令検索)。
書かれているのは免責であって、削除しなさいという命令ではありません。
誰かに削除を強制する条文だと思って読むと、実務で食い違います。
理由2:3つの条件のうち、本人ができるのは1つだけです。
第1号の申出は被害を受けた側の行為です。
ところが第2号の照会と第3号の二日の経過は、事業者側の手順と時間の話です。
本人にできるのは、要件を満たした申出を正しく届けるところまで。
そこから先は事業者の運用に委ねられています。
理由3:条文が「知られていないこと」を前提にしています。
第5条は国と地方公共団体に対し、「私事性的画像侵害情報送信防止措置の申出を行う場合の申出先、申出方法等についての周知を図るための広報活動等の充実」を求めています。
条文は「必要な措置を講ずるものとする」という書き方です。
制度の存在だけでなく、周知のための広報活動までが措置として並べられています。
ただし「周知しないと使われない」という立法意図まで条文が書いているわけではありません。
理由4:刑事の条文が親告罪である点も同じ向きです。
第3条第4項は「前三項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。」と定めています。
ただし告訴前の捜査が一切できないという意味ではありません。
公訴を提起する段階に告訴が必要という定めです。
削除も、刑事の手続きも、起点が本人に置かれているという点で一貫しています。
第6条には、さらに踏み込んだ一文があります。
「私事性的画像記録等が拡散した場合においてはその被害の回復を図ることが著しく困難となる」。
拡散後の回復は難しい、と法律自身が認めています。
第6条は学校・地域・家庭・職域という場を挙げ、教育活動と啓発活動の充実を求めています。
拡散後の回復が難しいことを踏まえ、手前の段階にも重点を置いているように読めます。
ただし、これは条文の書き方から受ける印象であり、立法時の意図として公式に説明されたものではありません。
あくまで予想であり、断定ではありません。
申し出られるのは誰か|条文は「撮影対象者に限る」
第4条第1号は、申し出られる人をはっきり限定しています。
逐語では「(撮影対象者(当該撮影対象者が死亡している場合にあっては、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹)に限る。)」です。
| 立場 | 条文上の扱い |
|---|---|
| 撮影対象者本人 | 申し出られる |
| 本人が死亡している場合の配偶者・直系の親族・兄弟姉妹 | 申し出られる |
| 友人・第三者・見つけた人 | この号には挙げられていない(他の手続きは別途) |
第4条第1号が申出人として列挙しているのは、撮影対象者本人と、死亡時の配偶者・直系の親族・兄弟姉妹です。
友人や第三者が、他の法令・サービスの利用規約・通報制度に基づいて連絡できるかどうかは別に検討する話になります。
この号の免責要件を満たす申出人の範囲という意味であって、他の削除依頼を否定するものではありません。
条文が定める3つの条件
第4条は、柱書の「必要な限度」という条件に加え、第1号から第3号までのすべてに該当するときに事業者を免責します。
ここでは3つの号を順番に見ていきます。
| 号 | 内容 | 動く人 |
|---|---|---|
| 第1号 | 本人(または遺族)が、侵害情報・侵害された旨・その理由・私事性的画像記録に係る旨を示して申し出る | 本人側 |
| 第2号 | 事業者が発信者へ照会し、送信防止措置に同意するか尋ねる | 事業者 |
| 第3号 | 照会を受けた日から二日を経過しても、発信者から同意しない旨の申出がなかった | 発信者(沈黙) |
第1号でよく落ちるのが「示す」内容です。
条文が挙げているのは①名誉等を侵害したとする情報 ②名誉等が侵害された旨 ③その理由 ④その情報が私事性的画像記録に係るものである旨の4点です。
「消してください」だけでは、列挙された事項を示したことにならない可能性があります。
もうひとつ前提があります。
免責されるのは「当該措置が当該情報の不特定の者に対する送信を防止するために必要な限度において行われたものである場合」です。
必要な限度を超えた措置まで当然に免責されると定めたものではありません。
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「二日」はどこから数えるのか
第3号の逐語はこうです。
「当該発信者が当該照会を受けた日から二日を経過しても当該発信者から当該私事性的画像侵害情報送信防止措置を講ずることに同意しない旨の申出がなかったとき。」
読み取れる点が3つあります。
まず起算は申出の日ではなく、発信者が照会を受けた日です。
次に必要なのは同意ではありません。「同意しない」と言ってこなければ足りる形です。
そして沈黙が二日続けば要件を満たします。
刑事の条文|第3条は親告罪
提供行為そのものについては第3条に定めがあります。
第1項は「第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者は、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。」です。
| 項 | 内容 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 第1項 | 特定できる方法で電気通信回線を通じて提供 | 三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金 |
| 第2項 | 同じ方法で記録物を提供・公然と陳列 | 第1項と同様 |
| 第3項 | 前二項の行為をさせる目的で提供 | 一年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金 |
ここで見落とされやすいのが第4項です。
「前三項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。」。
つまり親告罪です。
適法な告訴がなければ、公訴を提起することができません。
第5項にも特徴があります。
「第一項から第三項までの罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三条の例に従う。」。
刑法第3条は国民の国外犯を定めた条文です。
国外で行われた行為との関係でも適用の可否を検討する規定であり、海外からの投稿がすべて処罰対象になるという意味ではありません。
私事性的画像記録に関するQ&A
Q1. この法律の正式名称は何ですか?
「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」です。
平成二十六年法律第百二十六号で、2014年11月27日に公布されました。
e-Gov法令検索には「リベンジポルノ規制法」「リベンジポルノ防止法」という略称も登録されています。
Q2. 第三者が見ることを認識して撮った画像は対象ですか?
第2条には除外の定めがあります。
撮影対象者が第三者が閲覧することを認識した上で、任意に撮影を承諾し又は撮影をしたものは、定義から除かれます。
撮影に同意しただけで直ちに除外されるという書き方ではありません。
個別の判断は専門家にご確認ください。
Q3. 家族や友人が代わりに削除を申し出られますか?
第4条第1号が申出人として定めているのは撮影対象者本人です。
本人が亡くなっている場合に限り、配偶者・直系の親族・兄弟姉妹が挙げられています。
それ以外の人は、この号には書かれていません。
Q4. 「二日」を過ぎれば必ず削除されますか?
そうとは限りません。
条文が定めているのは事業者が賠償責任を負わない条件です。
この条文自体は削除を義務づけたり、二日経過後の自動削除を定めたりしていません。
実際の対応は事業者の手続や個別の事情、他の法令・利用規約によって変わります。
Q5. 「懲役」ではなく「拘禁刑」と書かれているのはなぜですか?
現行の条文が「拘禁刑」表記だからです。
ネット上の解説記事には「懲役」のままのものが残っています。
条文を引用するときは現行条文で確認してください。
Q6. この記事の考察はどこまで確かですか?
考察は編集部の予想です。
条文はe-Gov法令検索の現行条文を確認しています。
ただし「消した側を守るための条文」という読み方は予想で、立法の意図が公式に説明されたものではありません。
執筆者・編集部は法律の専門家ではありません。
相談先と、条文が国に求めていること
第5条は、国と地方公共団体が「必要な措置を講ずるものとする」と定めています。
挙げられているのは次の内容です。
- 犯罪事実の届出を行いやすくするための捜査機関の体制の充実
- 申出先・申出方法等の周知を図るための広報活動等の充実
- 各般の問題について一元的に相談に応じる体制の整備
実際の相談先も公的に用意されています。
法務省の人権擁護機関はインターネット人権相談の受付窓口を設けており、フォームから相談すると最寄りの法務局から回答があります(法務省)。
総務省は違法・有害情報相談センターを案内しています(総務省)。
ひとりで判断せず、まず窓口に相談するのが結局は早道です。
附則にも将来を見た条文があります。
外国のサーバーを経由するなどした提供について、国際協力の在り方と関係事業者における通信履歴等の保存の在り方を検討する、という定めです。
国外経由の事案も想定した検討規定ですが、これだけで具体的な削除の方法や結果を定めたものではありません。
手元に置ける実務書があると、いざというとき動きやすくなります。
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まとめ
- 申し出られるのは本人(死亡時は配偶者・直系親族・兄弟姉妹)
- 第4条が定めるのは事業者の免責条件
- 要件は申出・照会・二日の経過の3つ
- 起算は発信者が照会を受けた日
- 第3条の罪は親告罪。刑法第3条の例に従う旨の規定もある
条文は短くても、誰が動くのかまで書き分けています。
本人の申出から始まり、事業者の照会と二日の沈黙で要件がそろう。
手順を知っておくことが、いちばん早い備えになります。