広田尚敬の動止フォトグラフとは?自作スリットカメラで列車を止めて背景を流す撮影法

【結論】動止フォトグラフとは、走る列車が止まり、背景だけが流れて見える撮影法です。

本記事はプロモーションを含みます。

  • 名付け親は広田尚敬さん本人
  • 使う機材は自作のスリットカメラ
  • 狙うのは走行中の列車の真横
  • 結果は車両が静止し背景が流れる
  • 同名の写真集が1982年に交友社から刊行
  • 代表作は1967年・常磐線の動輪
この記事で分かること
  • 動止フォトグラフという言葉の意味
  • スリットカメラで何が起きるのか
  • ふつうの流し撮りとの違い
  • 本人が語る撮影のコツ
  • 2026年8月23日放送回の情報

2026年8月23日のEテレ「日曜美術館」で
特集される広田尚敬さん。
この人の名前とセットで語られるのが
「動止フォトグラフ」という言葉です。
聞き慣れないはずで、
広田さん自身が付けた呼び名だからです。

目次

【考察】なぜこの技法は真似されなかったのか

ここからは編集部の考察です。
結論を先に言うと、
動止フォトグラフが広まらなかったのは、機材を自分で作らないと成立しないからだと考えています。
理由を6つ挙げます。

理由1:カメラが売っていないから。
広田さんが使ったのは自作のスリットカメラです。
店で買える機材ではありません。
つまりこの技法は、
撮影の腕だけでなく工作の腕が前提になります。
写真家の多くはここで足が止まります。
広田さんは自作の撮影機材を複数使っており、
道具を作ることまで含めて仕事にしていました。

理由2:失敗が事前に見えないから。
フィルムの時代です。
撮った直後に画面で確認する手段がありません。
広田さん自身、
フィルム時代は「一発必中」で撮っていたと語っています。
作った機材が正しく働いたかどうかは
現像するまで分からない——この不確実さは重い負担です。
仕事として撮っている人ほど、
納品できない可能性のある手法には手を出しにくくなります。

理由3:被写体が待ってくれないから。
狙うのは走行中の列車の側面です。
1本逃せば次のダイヤまで待つことになります。
広田さんは若い頃、
国鉄の仕事で夜行列車で現場へ行き、朝から山に登って待機し、撮れるのは1枚か2枚という
働き方をしていました。
試行回数そのものが極端に少ない世界です。

理由4:ねらいが「記録」から外れているから。
当時の鉄道写真は
車両形式を正確に写す記録としての要素が重視されていました。
動止フォトグラフは、
車両を止めて背景を流すという
現実には見えない見え方を作ります。
記録として求められている仕事とは、方向が逆でした。
広田さんは風景や人の営みを画面に取り込み、
表現としての鉄道写真を確立した第一人者と評されています。
その第一歩がこの技法でした。

理由5:本人が言語化してしまったから。
広田さんはこの手法に名前を付け
1982年に交友社から同名の写真集を出しています。
技法に固有名詞が付いた時点で、
後から同じことをやる人は
「広田の技法をやっている人」にしかなれません。
名付けが参入障壁になった面があります。

理由6:時代がデジタルへ動いたから。
広田さんはデジタル時代について、
シャッターを押せば1秒間に数十枚撮れると語り、
フィルム時代は「撮る文化」、
デジタルは「消す文化」だと表現しています。
大量に撮って選ぶやり方が普通になれば、
一発必中の自作機材に賭ける動機は薄れます。

以上は編集部の考察・推測です。
技法が広まらなかった理由を
本人が語ったわけではありません。

動止フォトグラフの仕組み

やっていることを整理すると、
次のようになります。

呼び名動止フォトグラフ(広田さんの命名)
使う機材自作のスリットカメラ
狙う位置走行中の列車の真横(車両の側面)
手法流し撮り
写り方車両が止まり、背景が流れる
関連書籍『動止フォトグラフ』(交友社・1982年)

ふつうの流し撮りは、
被写体を追いながらシャッターを切って
背景を流す手法です。
動止フォトグラフはそれを
真横から、スリットを使って行うところが違います。
結果として、
走っているはずの列車が
あたかも止まっているように写ります。

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※撮影の入門書から作品集まで幅広く探せます。

代表作は1967年の動輪

広田さんの代表作としてよく紹介されるのが、
躍動する機関車の動輪をとらえた一枚です。
撮影場所は常磐線の木戸〜広野駅間
撮影は1967年
走ってくる列車にタイミングを合わせて
シャッターを切る流し撮りで撮られています。

1967年は初の個展「蒸気機関車たち」の前年にあたります。技法の実験と作品の発表が、ほぼ同じ時期に進んでいました。

本人が語る撮影のコツ

計画を持たずに沿線を歩く

広田さんは、
事前に「こういう写真を撮ろう」と決めないと語っています。
まず沿線を歩く。
すると「この風景、この時間ならこう撮れる」という
アイデアが浮かんでくる——という順番です。
「頭はまっさらでないと駄目」という言い方をしています。

偶然を「いただく」

風で機関車の煙が流れたり、
鳥の群れが飛び込んできたり。
広田さんはこうした偶発的な要素を
「その偶然をいただくんです」と表現します。
目の前の光景をどうまとめ、画面をどう構成するか。
瞬時に決断することが写真の極意だといいます。

足を踏ん張って撮る

大井川鐵道での撮影について広田さんは、
「大地に足をしっかり踏ん張って撮ること」が大切だと語りました。
理由は「しっかり立たないと絵が安定しません」
流し撮りのように
カメラを動かしながら撮る手法では、
下半身の安定がそのまま画面に出ます

2026年8月23日の放送情報

番組日曜美術館
タイトル鉄道のくにを撮る 写真家 広田尚敬
放送日時2026年8月23日(日)午前9:00〜9:45
放送局NHK Eテレ1・東京
再放送2026年8月30日(日)午後8:00〜8:45
出演広田尚敬、飯沢耕太郎、ハービー・山口

番組では撮影秘話のインタビューが予告されています。
紹介文に挙がっているのは
極寒の雪の峠からSLをねらった思い出
技法の話がどこまで出るかは分かりませんが、
後半にはローカル線の撮影への密着があるとされています。

よくある質問

スリットカメラとは何ですか?

細い隙間(スリット)を通して
像を記録する仕組みのカメラです。
広田さんはこれを自作して撮影に使いました。
市販品を買って使ったわけではありません。

ふつうの流し撮りとどう違うのですか?

通常の流し撮りは、
被写体を追いながら撮って背景を流します。
動止フォトグラフは
車両の真横からスリットカメラを使う点が特徴で、
車両があたかも止まっているように写ります。

同じ名前の写真集はありますか?

あります。『動止フォトグラフ』(交友社・1982年)です。
広田さんの代表的な著作の一つに数えられています。

代表作はどこで撮られたのですか?

動輪をとらえた代表作は、
常磐線の木戸〜広野駅間1967年に撮影されました。
走ってくる列車に合わせた流し撮りです。

今から真似できますか?

自作機材が前提になるため、
そのまま再現するのは簡単ではありません。
ただ広田さんはデジタル世代に対して
「ともかく、たくさん撮れ」と指導しています。
連写して選び、いらないものは自分で消す。
それがデジタル時代のやり方だという考えです。

撮影で気をつけるべきことは?

広田さんは子ども向けのマナー講座で、
鉄道と周りの人に迷惑をかけないことを第一に挙げています。
撮影場所は他人が暮らす土地であり、
他人の家を訪問するのと同じという考え方です。

まとめ

動止フォトグラフは、
広田尚敬さんが自ら名づけた撮影技法です。
自作のスリットカメラで走行中の列車を真横から流し撮りし、
車両が止まって背景が流れる画面を作ります。
1982年には交友社から同名の写真集も出ました。

この技法が今後どう受け継がれるかは未知数です。
ただ広田さんは、
デジタル時代の撮り手には「たくさん撮って自分で消す」という
まったく別の作法を勧めています。
技法をそのまま渡すのではなく、時代に合った方法を示す——
そこに90歳の現役らしさがあります。
放送は8月23日(日)午前9時からです。

参照リンク

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