【結論】基町アパートの自治会長の仕事は共益費の徴収・修繕管理・連合会議への出席が中心です。
- 基町アパートの自治会は全部で17ある
- 板井さんの受け持ちは約150世帯・300人
- 回覧板は4言語以上を併記している
- 高齢化率は47.4%(広島市全体の約2倍)
- 就任理由は「おじいさんにおしつけられた」
- 基町アパートの自治会の仕組みと規模
- 自治会長の具体的な仕事内容
- 多文化団地で自治が止まる理由の考察
- 数字で見る住民構成
2026年8月23日(日)午前8時25分、NHK総合の「Dearにっぽん」で広島の巨大団地が取り上げられます。
副題は「若き自治会長の奮闘記」。
「奮闘」と付くからには、何かと闘っているはずです。
では団地の自治会長は、実際に何をしているのか。
この記事は人物紹介ではなく、仕事の中身に絞って整理します。
【考察】なぜ回覧板ひとつが止まってしまうのか
ここからは編集部の考察です。
結論を書きます。
基町アパートで自治が滞る最大の原因は、住民の意欲の問題ではなく、自治会という仕組み自体が「全員が同じ言葉を読める」前提で作られていることだと考えています。
そう考える理由を5つ挙げます。
理由1:回覧板は「次の人に渡す」ことでしか動かない
板井さん自身が「回覧板ひとつとっても、文化の違いからストップすることがままあって」と語っています(TD)。
回覧板は一人でも止めれば、そこから先には届きません。
掲示板やチラシと違い、全員が同じ動作をすることを前提にした仕組みだからです。
理由2:住民の5人に1人以上が日本以外にルーツを持つ
2019年の調査では、基町アパートで日本以外にルーツを持つ住民の割合は22.2%でした。
広島市全体の1.6%と比べると約14倍にあたります。
日本語だけの紙が回れば、5世帯に1世帯以上で情報が途切れる計算です。
止まるのは当然だと言えます。
理由3:住民の集まりが最初から分かれている
板井さんによれば、団地内のサークルは言語や出自ごとに分かれているといいます。
日本人が集まる水彩画教室、中国系の刺繍サークル、インド系のアクセサリーサークル——といった具合です。
自治会は住所で自動的に区切られる組織ですが、実際の人のつながりは言語で区切られている。
この2つの線が一致していないことが、運営を難しくしていると考えます。
理由4:高齢化と多国籍化が同時に進んでいる
同じ2019年の調査で、基町アパートの高齢化率は47.4%。
広島市全体の約25%に対し、およそ2倍です。
「高齢化だけ」なら従来のやり方の延長で回せます。
しかし高齢化と多言語化が重なると、担い手も伝達手段も同時に細ることになります。
理由5:行政の目標と住民の願いがずれている
板井さんは「地域活性化」を名目とする学生枠で入居した立場から、市が求める活性化と住民が求めるものが異なると気づいたと述べ、「複雑な気持ちになっています」と語っています。
そもそも団地には「流れ着いてきた人」が多く、ここでの暮らしを良しとしていない住民もいるといいます。
盛り上げること自体が目的にならない場所がある、と予測します。
以上は公開情報にもとづく考察・推測であり、確定した分析ではありません。
自治会長の仕事の中身
板井さんが担当している業務は、次のように整理できます。
| 仕事 | 内容 |
|---|---|
| 共益費の徴収 | 担当する自治会の各世帯から集める |
| 建物の修繕管理 | 共用部分の不具合対応など |
| 連合自治会会議への出席 | 17自治会をまたぐ会議に出る |
| 回覧板の運用 | 多言語を併記して回す |
目立つ行事の企画よりも、お金・建物・会議という地味な三本柱が中心です。
「奮闘記」という言葉の実態は、こうした日常業務の積み重ねだと分かります。
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17に分かれた「コア」という単位
基町アパートの自治会は、階や棟ではなく「コア」という独特の単位で区切られています。
コアを分ける基準はエレベーターです。
同じエレベーターを使う全フロアの世帯が、ひとつの自治会になるという考え方になっています。
| 棟 | コア番号 | 自治会の数 |
|---|---|---|
| 18号棟 | 1〜6コア | 6 |
| 19号棟 | 7〜11コア | 5 |
| 20号棟 | 12〜17コア | 6 |
| 合計 | — | 17 |
板井さんが受け持つ自治会には約150世帯・およそ300人が暮らしています。
小さな自治会というより、ひとつの集落に近い規模です。
数字で見る基町アパートの住民
自治会運営の難しさは、住民構成の数字にそのまま表れています。
| 項目 | 基町アパート | 広島市全体 |
|---|---|---|
| 高齢化率 | 47.4% | 約25% |
| 日本以外にルーツを持つ住民 | 22.2% | 1.6% |
いずれも2019年の調査にもとづく数値です。
高齢化率は市全体の約2倍、多国籍化にいたっては14倍近い開きがあります。
回覧板に併記されている言語は、日本語と中国語に加えてヒンディー語やネパール語にまで及ぶといいます。
よくある質問
Q1. 自治会長はどうやって決まるのですか?
選出方法は公表されていません。板井さんは就任のいきさつを「住民のおじいさんにおしつけられたから」と冗談まじりに語っています。
Q2. 何世帯を担当しているのですか?
約150世帯・およそ300人です。これは17ある自治会のうちのひとつ分にあたります。
Q3. 報酬は出るのですか?
自治会長の報酬について公表された情報は見つかりませんでした。一般に町内会・自治会の役員は無報酬か少額の手当というケースが多いものの、基町アパートの実情は確認できていません。
Q4. なぜ「コア」という呼び方なのですか?
エレベーターホールが建物の中核部分にあたるためとみられます。基町アパートではエレベーターホールを「コアホール」と呼び、天井高5メートルの吹き抜けになっています。
Q5. 回覧板は何語で書かれているのですか?
日本語と中国語のほか、ヒンディー語やネパール語も併記されているとのことです。住民構成の変化に合わせて言語が追加されてきました。
Q6. 住民同士の交流はあるのですか?
サークル活動は活発ですが、グループごとに分かれているのが実情です。編み物サークル、水彩画教室、中国系の刺繍サークル、インド系のアクセサリーサークルなどがあると紹介されています。
今後の見通し
基町アパートは建て替えの段階に入っています。
17号棟は基町第21・第22アパートとして建て替えが進み、広島市は中層棟の廃止方針も示しました。
住棟が減れば、自治会の区割りそのものが変わることになります。
コアとエレベーターを基準にした17の自治会という形も、いずれ見直される可能性が高いと予測します。
その意味で、この放送は変わる直前の自治会の記録という価値を持つと考えます。
まとめ
基町アパートの自治会長の仕事は共益費の徴収・建物の修繕管理・連合自治会会議への出席が柱です。
加えて、多言語での回覧板の運用が加わります。
自治会はエレベーター単位の「コア」で17に分かれ、板井三那子さんはそのうち約150世帯・300人を受け持っています。
高齢化率47.4%、日本以外にルーツを持つ住民22.2%。
この数字の上に成り立つ自治のかたちが、2026年8月23日(日)午前8時25分の放送で描かれます。