【結論】『精神病院つばき荘』は、現役の精神科医が書いた戯曲です。作者は、こころの時代に出る胡桃澤伸(くるみざわしん)さんです。
- 作者は精神科医の胡桃澤伸さん。筆名は「くるみざわしん」
- 2017年の日本劇作家協会新人戯曲賞で最終候補に選ばれている
- 2018年から2020年にかけて新宿ゴールデン街劇場ほかで上演された
- 2021年にラグーナ出版から連作戯曲集としてまとまった
- 戯曲集には未上演の2作を含む全5篇が収録されている
- 作者の出演は2026年8月23日(日)5:00〜 NHK Eテレ「こころの時代」
NHK Eテレ「こころの時代」に、劇作家・精神科医 胡桃澤伸さんが登場します。
番組が扱うのは、満蒙開拓をめぐる祖父の話です。
ただ、この人にはもうひとつの仕事があります。
それが精神医療を題材にした戯曲で、代表作のひとつが『精神病院つばき荘』です。
- 『精神病院つばき荘』がどんな作品か
- 戯曲集に収録された5篇の内訳
- 作業所との共同製作という作り方
- 作者自身が書いた言葉
【考察】現役の医師が、なぜ自分の職場を書くのか
ここからは編集部の考察です。
胡桃澤さんは、いまも精神科医として働きながら戯曲を書いています。
そして書いている題材が精神医療そのものです。
普通なら、書きにくい題材のはずです。
結論から言うと、
胡桃澤さんは告発ではなく、自分を含めた場所を書いているのだと考えます。
そう考える理由を6つ挙げます。
理由1:紹介文が「自らの汚れ」と書いている
これは推測ではありません。
戯曲集の紹介には「精神科医として働いて23年の著者が、増す一方の自らの“汚れ”に光をあてる」とあります(ラグーナ出版)。
誰かの汚れではありません。自分の側です。
理由2:作者本人が境界の曖昧さを書いている
「著者より」として、こう記されています。
「どちらが患者で治療者なのかわからない。どちらも患者で治療者である混沌に身を置き、精神医療の不条理に自由とユーモアを注ぎ込む。ここで人間の尊厳を問いかえす」。
治す側と治される側を分けない、という宣言です。
理由3:「ユーモア」という語をわざわざ使っている
ここは編集部の見立てです。
告発を目的にした作品なら、ユーモアは邪魔になります。
それでも「自由とユーモアを注ぎ込む」と書いている。
読者や観客を裁く側に立たせないための選択だと考えます。
理由4:当事者と一緒に作っている
これが決定的です。
胡桃澤さんは2019年から東大阪市の就労支援作業所「リカバリースペースみーる」との共同製作に取り組み、そこで『私 精神科医編』を書いています。
その後『私 ケースワーカー編』『あなた 精神科医編』と連作にしました。
取材して書いたのではなく、一緒に作ったという形です。
理由5:連作の題名が人称になっている
『私 精神科医編』『私 ケースワーカー編』『あなた 精神科医編』。
並べると、「私」と「あなた」という人称が題名の軸になっていることが分かります。
職種名は後ろに付いた副題です。
立場より先に、誰が語っているかを問う構造になっています。
理由6:祖父を書いたときの姿勢と同じ形をしている
胡桃澤さんは、満蒙開拓を扱うときにも被害ではなく加害の側面から祖父を問い直しています。
自分の側から書く、という点で、精神医療の戯曲と同じ姿勢です。
題材は違っても、立ち位置の取り方が一貫していると考えます。
ここから先は予測です。
8月23日の回は満蒙開拓と祖父が中心と案内されています。
精神医療の戯曲がどこまで触れられるかは分かりませんが、「表現を取り戻した」経緯の中で名前が出る可能性はあると見ています。
以上はあくまで編集部の考察です。
胡桃澤さんが「告発ではない」と述べた記述は確認できていません。
戯曲集の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 書名 | くるみざわしん 精神医療連作戯曲集 精神病院つばき荘/ひなの砦 ほか3篇 |
| 版元 | ラグーナ出版 |
| 刊行 | 2021年2月19日 |
| 判型 | A5判(148×210ミリ)・194頁 |
| 定価 | 本体2,000円+税 |
| ISBN | 978-4-904380-99-4 |
| 著者名義 | くるみざわしん(本名:胡桃澤 伸) |
版元のラグーナ出版は鹿児島の出版社で、精神科ドキュメントやメンタルヘルスの本を多く出しています。
著者一覧には中井久夫さんの名前も並んでいます。
番組の紹介文にある「精神科医・中井久夫」との出会いを思うと、この並びは偶然ではないように見えます。
作品を読んでみたい方向けに、戯曲集を探せるリンクを置いておきます。
▼ くるみざわしんさんの戯曲集はこちらから
※在庫や価格は変動します。リンク先でご確認ください。
収録された5篇
| 作品 | 位置づけ |
|---|---|
| 精神病院つばき荘 | 2017年 日本劇作家協会新人戯曲賞 最終候補 |
| ひなの砦 | 第22回 OMS戯曲賞 佳作 |
| 私 精神科医編 | 2019年から作業所との共同製作で執筆 |
| 私 ケースワーカー編 | 上の続きとして連作化 |
| あなた 精神科医編 | 副題「サリバンの夕べ under COVID-19 Crisis」 |
このうちコロナ以降の2作は未上演のまま収録されたと説明されています。
戯曲集の紹介文には、扱われる題材として次の4つが挙がっています。
医師国家試験で知った医療界の現実/自分の正しい名前を取り戻そうとする医師/「死について話をするのが怖い私」の独白/言葉の重みに呻吟する主治医の葛藤。
どれも医療を受ける側ではなく、担う側の内側を扱っていることが分かります。
上演の記録
| 年 | 作品 | 会場 |
|---|---|---|
| 2014年 | ひなの砦(光の領地・虚空旅団) | ウイングフィールド |
| 2018〜2020年 | 精神病院つばき荘 | 新宿ゴールデン街劇場 ほか |
| 2019年 | おはなし、お父さん | 新宿ゴールデン街劇場 |
『精神病院つばき荘』は2018年から2020年にかけて上演が続いた作品です。
2019年には、講談社の「現代ビジネス」でロングランを続ける理由を扱った記事も出ています。
作者・胡桃澤伸さんの立ち位置
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 本名 | 胡桃澤 伸 |
| 筆名 | くるみざわしん |
| 生年 | 1966年・長野県出身 |
| 本業 | 精神科医(専門は統合失調症、児童思春期) |
| 劇団 | 光の領地(2007年9月結成)代表 |
| 学んだ場 | 北区つかこうへい劇団 戯曲作法塾/伊丹想流私塾 |
胡桃澤さんが劇作を本格的に学び始めたのは37歳(2003年)からです。
医師として働きながら、あとから演劇に入っています。
戯曲集の紹介にある「精神科医として働いて23年」という数字も、この二足のわらじの長さを示しています。
誤解しやすい点
| 誤解されやすい書かれ方 | 確認できること |
|---|---|
| 元医師が書いた作品 | 執筆時も現役の精神科医 |
| 実在の病院の名前 | 戯曲の題名。作品名として使われている |
| 単独の戯曲 | 2021年に5篇の連作戯曲集としてまとまった |
| 作者名は「くるみざわ」だけ | 本名は胡桃澤 伸。読みは同じ |
| 取材して書いた作品 | 連作の一部は作業所との共同製作 |
よくある質問
Q1. 『精神病院つばき荘』は誰が書いたのですか?
劇作家で精神科医の胡桃澤伸さんです。
戯曲はくるみざわしんという筆名で発表されています。
Q2. 本として読めますか?
読めます。
ラグーナ出版から2021年2月19日に刊行された連作戯曲集に収録されています。
A5判194頁、本体2,000円+税です。
Q3. 何篇入っていますか?
5篇です。
『精神病院つばき荘』『ひなの砦』『私 精神科医編』『私 ケースワーカー編』『あなた 精神科医編』が収録されています。
Q4. 賞は取っていますか?
『精神病院つばき荘』は2017年の日本劇作家協会新人戯曲賞で最終候補に選ばれています。
『ひなの砦』は第22回 OMS戯曲賞の佳作です。
Q5. いま上演されていますか?
記録として確認できるのは2018年から2020年の上演です。
現在の上演予定については公式の告知を確認してください。
Q6. 番組ではこの作品が出ますか?
番組の紹介文にある中心は満蒙開拓と祖父です。
放送は2026年8月23日(日)5時00分〜6時00分、NHK Eテレ「こころの時代」です。
まとめ
『精神病院つばき荘』は、現役の精神科医である胡桃澤伸さんが「くるみざわしん」名義で書いた戯曲です。
2017年に日本劇作家協会新人戯曲賞の最終候補となり、2018年から2020年にかけて上演されました。
2021年にはラグーナ出版から5篇の連作戯曲集としてまとまっています。
作者自身の言葉は「どちらが患者で治療者なのかわからない」というものでした。
2026年8月23日(日)5時からのNHK Eテレ「こころの時代」に、この作者が登場します。