DIR EN GREY 『The World of Mercy』Review
[Category:Artist/DIsc Review・Artist: DIR EN GREY ・Writer:もりき(ライター)]
~自由の中で産まれた命
自由の中で飼われて行く世界で~
2019.9.18 Released
Track List
1.The World of Mercy
2.Dozing Green(Acoustic Version)
3.Grief(Live ver)
DIR EN GREYの記念すべき30枚目&令和一発目発売となるシングルナンバーの「The World of Mercy」をレビュー!
タイトル楽曲は2018年発表された10thアルバムである「The Insulated World」を完結させる立ち位置で作成された楽曲。
バンドは今まで「MACABRE」、「Mazohyst Of Decadence」、「VINUSHKA」といった長編曲を発表してはいるものの、シングル長編曲では99年の3枚同時メジャーデビューシングルの一つ「アクロの丘」以来であり、また最長の10分22秒の楽曲である。
曲構成はゆったりとしたテンポで始まる。主人公が闇の中を踏みしめ、そして傷を負いながらも光を求めさ迷う感覚に陥る・・・。しかしながら、憎しみや負の感情を抱えていくことに限界を感じたのだろうか?だんだんと不穏な雰囲気を纏い楽曲が進んで行く。
~手を取って繋ぐ世界
まだ見ぬ未来で腐ろう~
ちょうど折り返し地点の5分辺りでテンポはアップ!自分を押さえる事に限界を達したのだろうか?憎悪を爆発させるが如くに京の発狂したシャウトが耳を刺す!
~見て見ぬ振り それがお前
口角吊り上げ 集団リンチで生きてる実感~
感情を爆発させ振り撒いたのだろうか?嵐が過ぎ去ったように楽曲は再び静寂を取り戻す。しかしながら、どこか身体全体が重くずっしりとした気持ちになるが果たして・・・?
これぞまさしくDIR EN GREY!と言えるかは私には難しいが、今までアルバム楽曲でのみ発表されていたOPETHやTOOLを彷彿とさせるプログレッシブメタルテイストな長編曲をシングルでリリースさせるのも、新しい試みだなと改めて実感した。
表題曲に関しあえて言うならば、もう少しアウトロは盛り上がって欲しかったかな?とは思ったが、これはこれで悪くはないだろう。激しい展開がもっと欲しい人には物足りなさを感じてしまう可能性はあるが、DIR EN GREYというバンドは激しさだけではない、ということを記しておこう。
カップリングは2007年発表の「Dozing Green」のAcoustic Versionと2007年の6thアルバム『THE MARROW OF A BONE』収録の「Grief」のLive Versionを収録!「Dozing Green」はオリジナル版が収録された7thアルバム『UROBOROS』(VINUSHKAも収録)の禍々しい雰囲気が消え、叙情的な楽曲に早変わり!まさかここまでシンプルになるとは!(笑)
「Grief」のライブテイクは京の「ぶっ潰してこい!」と叫ぶMCとオーディエンスの歓声が、より臨場感を伝えてくれる!またオリジナル音源と比べると、シャウトだけでなくバンド全体の演奏技術が進歩していることにも驚かされた。
記念すべき30枚目のシングルに変化球を出すとは彼ららしいなと思えたが、また次にリリースされる作品も予想をいい意味で裏切ってくれる事は確かである。
令和を迎えたDIR EN GREYも、きっと更に進化を続けてくれるであろう!